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2013. 07. 27  
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」読了。

やっぱり、村上春樹はストーリーテラーとして、一級だなあ、と素直に感動しました。いつからかいろんなことを深読みする年齢になって、舞台裏に関心がいって、素直にストーリーそのものを楽しめなくなって久しい。でも久しぶりに彼の小説を読んで、ああやっぱりこの人うまい、一流の小説家だ、と思いました。

一度読んだあとに、2度、3度読んでも、毎回新しい発見があるような本。どのページにもその作家のエネルギーが充満している本。自由に展開しているようで、細部に至るまでその作家がその世界に破れがないよう、細心の注意を払っているのが分かる本。私の好きな小説、てこういうものです。小説書くとき、その世界にのめり込みすぎていると独りよがりで、離れすぎていると評論家のようになってしまう。ある意味指揮者みたいな感覚が必要なんだろうと思う。書くの難しいと思います。

シェイクスピアや夏目漱石(などはもう完全に神の御技の領域なので、私が何かをいうなどおこがましいけれどあえていえば)、太宰治とか、荻野アンナとか、ストーリーテラーとしての職人技に、うまいなあ〜〜〜、と思う人はたくさんいます。技を超えたところにいるのが、例えばガルシアマルケスの「百年の孤独」とかエミリーブロンテの「嵐が丘」。これはもう「降りている」としかいえない感じの世界。

ものかきって、その人のエネルギーを言葉で保持している。現代アメリカの人気作家などは、こうやれば大衆が喜ぶ、というのを熟知したストーリー展開で、ダビンチコードの著者などは、ああいう内容をどうしてあんなにハリウッドにできるんだろうと思うくらい、その計算が随所に透けて見えてうんざりします。彼らにとって言葉はあくまでもメディアで、言霊の存在すら知らないのではとさえ思う。私はあいまいな日本語を使いこなせる日本人でよかったとつくづく思います。もっとも村上春樹って、どこか英語に近い文体ですが。訳されてもあまり彼の世界が壊されないので、外人に受けるのかもしれない。ご本人英語が堪能なので、そこまで意図してるかもしれない。源氏物語などは、絶対英訳できない。(英訳されたの知っていますが、原文のエネルギーはやっぱりなかった。)日本の和歌や俳句も、やっぱり難しい。

話それましたが、村上春樹って、物書きという職人として、やっぱりすごい。あるメソッドの創始者が人間的に優れている必要は必ずしもなくて、村上春樹は村上ワールドの創始者として、これを貫けばいい。私はノルウェーの森を読んで、彼はこれ以上先にはいけない人だと勝手に見限って興味を失っていましたが、多崎つくるに、ノルウェーの森の「僕」の先を見た気がする。他者と関わって傷つくのを怖がる、現代のネット世代の若者に対する応援歌かもしれない。村上春樹がこんなに素直に主人公に弱さとかベタな感情を語らせるのって新鮮で、彼のつくるくんに対する愛にあふれたまなざしまで感じたりして、驚きました。今までは、肥大した自意識が鼻について仕方ない「僕」と、登場人物が何人いようとモノローグにしか聞こえない会話、そして凝った構成が、村上ワールドと思っていたけれど。今回構成はむしろすごくシンプルで、でも小説の大家らしい見所もたくさんあって、むしろ質のいい古典小説を読んだみたい。残念ながら今回も、「恋愛」が描かれる前に話が終わってしまったけれど・・。

「色彩を持たず空っぽ」 で自分に自信がない主人公の多崎つくるくん。これでもか、というくらい、大事な人に「切り捨てられ、置き去りに」されて、傷ついたその傷口からいまでも血が滴っているのを、決して他者に知らせず自分でも封印してきた彼。この封印は私がノルウェーの森を読んで、主人公の「僕」に感じたことで、村上春樹自身に感じた事でした。ご本人は絶対否定するでしょうが。偶然昨日のブログに書いてしまっていました。

傷口は、封印では癒せない。

まだ血が滴って、膿んでいるのを、むりやりガーゼを引きちぎって、尚更ひどくさせよと言っているのではありません。そこを弄くり回し、苦しみを何度も苦しむのがトラウマの負のスパイラル。これをやれと言っているのでは断固、ない。でも必要な時間を経た後、この傷は治癒させてやらないといけない。封印し、存在を否定していては、その傷から学べない。経験しきれない。

私が関心のあるのはここで、心の傷を癒すプロセスを手伝いたい、それを安全に、システマティックに、プロフェッショナルに、ということでたどり着いたのが、クラシカルホメオパシーであり、ロルフィングであり、ホメオパシーであり、Somatic Experiencingだったわけです。

つくるくんが自分のなかの封印に気づいたくだり:

ーそうしているうちに、身体の中心近くに冷たく硬いものがー年間を通して溶ける事のない厳しい凍土の芯のようなものがーあることにふと気づいた。それが胸の痛みと息苦しさを生み出しているのだ。自分の中にそんなものが存在する事を、それまで彼は知らなかった。
 でもそれは正しい胸の痛みであり、正しい息苦しさだった。それは彼がしっかり感じなくてはならないものなのだ。その冷ややかな芯を、自分はこれから少しずつ溶かして行かなくてはならない。しかしそれが彼のやらなくてはならないことだった。


ここです。ここに、あります。ここからが始まり。村上春樹がこういうことをベタに書く人とは思っていなかったので、ここを読んで村上春樹に対する見方が180度変わりました。応援したい、と思いました。つくるくんに対するまなざしで、ぜひこれからも世界中の読者にむかってこのあたりを正しく掘り下げて行っていただきたいと思いました。

ところで、村上春樹の小説にたいてい出てくる「死」。どこかイコンのようで、ノルウェーの森の「直子」を連想する「シロ」の死因が悪霊、ということで、たまたま吉本ばななが、悪霊の存在を断言していたことが気になっていたのと合わせて、この偶然にびっくり。村上春樹と吉本ばななに、是非悪霊対談していただきたいです。私はいつも情報に疎いので、もうどこかで行われているのかもしれませんが。
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Author:rolfertakami
鎌田孝美(Takami Kamata)

http://www.takamirolfing.com

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ヨーロッパロルフィング協会に所属する、
ヨーロッパで第2号の日本人ロルファーです。
英国スクールオブホメオパシー
アドバンスプラクティショナーコースに在籍し
現在臨床を行っています。

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内側に深くしまいこんだこだわりを、抱きとめ、見つめ、解放し、
かわりに内側で眠る可能性に光を与える。
身体が目覚め、失ったものを取り戻していく過程を
みなさまと楽しんでいきたいです。

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・ヨーロッパロルフィング協会認定
公式アドバンスロルファー
・同ロルフムーブメントプラクティショナー
・直傳靈氣師範
・全米ヨガアライアンス認定
ヨガインストラクター
・陰ヨガインストラクター
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